札幌市にある円山動物園。
とても思い出深い動物園。
日本に数ある動物園の中でも、訪れた回数では指折りの場所。
ここで暮らすホッキョクグマのデナリとララ、
そしてその両親から生まれたイコロとキロル、
私が動物園で写真を撮るきっかけと喜びを与えてくれました。
私が通い始めた頃は、イコロ・キロルのホッキョクグマの双子と
ヤマト・ユッコのユキヒョウの双子の赤ちゃんが公開された時期。
現在のような最新施設が整った場所ではなく、
なんとなく昭和の風情が香る雰囲気の動物園でしたが、
動物たちとの距離も近く、札幌市内でありながらのんびりと過ごせる
お気に入りの動物園。
それは今でも変わりません。
その後もララとデナリの仔たち、
アイラ・ポロロ・マルル、そしてまだ名もない現在の仔と
ずっとホッキョクグマの一家を中心に
円山で暮らす愛すべき動物たちを撮り続けています。
歴史ある動物園だけに、高齢かつご長寿の動物も多い。
最近特に印象深いのは、41歳まで生きたエゾヒグマの栄子。
起立不能になってからも粘り強く介護し、命を長らえてくれました。
最後は安楽死という手段を選択せざるを得ない状況となりましたが、
安らかな最期を栄子に与えてくれたこと、
残念ですが、納得のいく措置であったと思います。
そんな円山動物園ですが、ここ数年は施設の老朽化に伴う建設ラッシュが続きます。
オオカミ舎とエゾヒグマ館の新設、
熱帯動物館と世界の熊館に収容されていた一部の動物をアジアゾーンに移し、
今秋には新たにアフリカのサバンナゾーンが完成、熱帯動物館に残る動物が
新施設に移ります。
熱帯動物館からの動物の移動が完了後、その跡地は現在展示されていない
アジアゾウの展示施設に生まれ変わります。
また、古い施設をメンテしながら使用している、現在ホッキョクグマたちが住む
世界の熊館も、数年後をめどに新しい施設に生まれ変わります。
いずれも巨額の予算をつぎ込んだもの。
要・不要の議論は別として、老朽化した施設をリニューアルすることについて
異議を持つ者ではありません。
ところが、それら新たに設置された施設において、
なぜか飼育動物の死亡事故が多発しています。
しかも、営業時間中、来園者の目の前で発生するという
ショッキングな出来事ばかり。
2010年11月
エゾヒグマ「カステラ」の死亡事案(翌年2月:
調査結果発表)
2013年1月
シンリンオオカミ「キナコ」の死亡事案(翌2月:
施設改善案発表)
2014年5月
マレーバク「トーヤ」の死亡事案2015年5月
コツメカワウソ「ずんだ」の死亡事案そして今回の事故。
2015年7月
マレーグマ「ウッチー」の死亡事案種の保存を大きな目的とする動物園において
飼育動物が自らの天命を全うできない事故が
これだけの数、発生しています。
シンリンオオカミの事故のあたりまでは原因の究明及び説明責任は
なんとか果たしているとは思われますが、
その後は、事故の頻度が増すにつれ、説明責任を果たしているとは
とても言えない状況にあります。
そこへもってきての、今回の事故。
動物園はただ、「亡くなりました」としかアナウンスはしておらず、
説明責任を果たす気すらなさそうです。
あんなに動物や来園者に寄り添っていた動物園が
なぜこうなってしまったのでしょう?
新施設の建設が進むにつれ、事故は増え、動物園の冷徹な事務的対応が
目立つようになっている印象を受けます。
そして、来園者と動物園との距離は、どんどん離れてゆきます。
円山動物園の設立理念は「人と動物と環境の絆を作る動物園」。
現在の動物園の関心事は、「お金」との絆なのでしょうか?
素晴らしい箱(=施設)を作っても、来園者の声を聞かない動物園の未来、
とても危惧しています。
今の円山動物園、明らかにおかしなことになっています。
愛すべき円山動物園を取り戻すために、自分に今何ができるのか、
考え続けたいと思う。

本当は中からそんな声が聞こえることを期待しているのだけど、
そんな期待が、どんどん薄れてゆく・・
こんなに悲しいことはありません。
テーマ: 写真にコトバをのせて
ジャンル: 写真